コラム

結局どんな人におすすめ?歯科ボトックスの向き・不向き(テーマ:ボトックス 第6回/全6回)

ここまでのコラムで、歯科ボトックスの仕組みや効果、注意点についてお話ししてきました。では実際のところ、「自分は受けた方がいいの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。歯科ボトックスは、すべての人に必要な治療ではありません。しかし、食いしばりや歯ぎしりによるトラブルに悩んでいる方にとっては、有効な選択肢になる場合があります。今回は、どんな人に向いていて、どんな人には別の方法が合うのかを、歯科医の視点からわかりやすくお話しします。

そもそもボトックスは全員に必要な治療ではありません

ここまで読んでくださった方の中には、

「食いしばりがあるなら、みんな受けた方がいいのでは?」

と思われた方もいるかもしれません。

でも実際はそうではありません。

治療には相性があります

歯科医療全般に言えることですが、どんな治療にも向き・不向きがあります。

例えば虫歯治療でも、

・経過観察でよい場合
・詰め物が必要な場合
・神経の治療が必要な場合

がありますよね。

ボトックスも同じです。

「ボトックスが正解」というより、

その方の状態に合っているかどうかが大切

なのです。

大切なのは原因を見極めること

顎が痛い。

頭痛がする。

歯が欠けた。

これらの症状があったとしても、必ずしも原因が食いしばりとは限りません。

まずは原因を見極めること。

そして、その結果としてボトックスが選択肢になるかどうかを判断します。

こんな方にはおすすめです

実際の診療でも、ボトックスが役立つケースはいくつかあります。

食いしばりや歯ぎしりが強い方

最も多いのがこのケースです。

・朝起きると顎が疲れている
・家族から歯ぎしりを指摘された
・歯がすり減っている

こういった方は、噛む力が強くなっている可能性があります。

歯はとても丈夫ですが、毎日強い力を受け続けると少しずつダメージが蓄積していきます。

ボトックスによって筋肉の負担を軽減することで、歯や顎を守ることにつながります。

詰め物や被せ物がよく壊れる方

治療した歯が何度も欠けたり外れたりする。

そんな方も少なくありません。

もちろん材料や噛み合わせの問題もありますが、

実は「噛む力の強さ」が原因になっていることがあります。

せっかく治療しても、強い力が続けば再発する可能性があります。

そんなとき、ボトックスが選択肢になることがあります。

マウスピースが苦手な方

歯ぎしり対策としてよく使われるのがマウスピースです。

ただ、

・違和感が強い
・眠れなくなる
・続かなかった

という方もいます。

そうした場合に、別の選択肢としてボトックスを検討することがあります。

逆におすすめしないケースもあります

どんな治療にも向かないケースがあります。

症状が軽い場合

食いしばりがあっても、

・歯へのダメージが少ない
・顎の症状がない
・経過観察で十分

というケースもあります。

そういった場合は、まず生活習慣の改善や経過観察から始めることもあります。

原因が別にある場合

顎の痛みや頭痛の原因が、

必ずしも食いしばりとは限りません。

姿勢の問題だったり、別の病気が隠れていたりすることもあります。

そのため、

「顎が痛い=ボトックス」

という単純な話ではないのです。

治療への期待が大きすぎる場合

ボトックスは便利な治療ですが、魔法ではありません。

一度受ければすべて解決するわけではありませんし、永久に効果が続くわけでもありません。

適切な期待値を持つことも大切です。

マウスピースとボトックス、どちらがいい?

患者さんから本当によく聞かれる質問です。

実は目的が少し違います

マウスピースは、

歯を守る治療

です。

一方でボトックスは、

力を弱める治療

です。

似ているようで、役割は少し違います。

併用することもあります

例えば、

マウスピースで歯を守りながら、

ボトックスで筋肉の負担を軽減する。

そんな組み合わせを行うこともあります。

どちらか一方ではなく、状態に応じて組み合わせる考え方もあります。

自己判断は意外と難しい

インターネットで調べると、

「自分にはこれだ」

と思ってしまうことがあります。

でも実際に診察してみると、想像していた状況と違うことも少なくありません。

だからこそ、まずは相談してみることが大切です。

「気になる」くらいで相談して大丈夫です

歯科医院というと、

「治療が必要になってから行く場所」

と思われがちです。

でも、最近は少しずつ変わってきています。

予防のために相談する時代

虫歯や歯周病だけでなく、

食いしばりや歯ぎしりも予防の対象です。

歯が割れてからではなく、

割れる前に対策する。

その考え方が大切になっています。

無理にすすめる治療ではありません

これはシリーズを通してお伝えしたかったことです。

ボトックスは、

必要な方には役立つ治療です。

でも、必要のない方に無理におすすめするものではありません。

まずは状態を確認して、

そのうえで選択肢の一つとして考えていただければ十分です。

まとめ

歯科ボトックスは、すべての人に必要な治療ではありません。

しかし、

・食いしばりが強い
・歯ぎしりがある
・顎の疲れが気になる
・詰め物や被せ物がよく壊れる

といった方にとっては、有効な選択肢になることがあります。

大切なのは、「受けるべきかどうか」を一人で判断しないことです。

症状やお口の状態によって、最適な方法は変わります。

このシリーズを通して、歯科ボトックスについて少しでも身近に感じていただけたならうれしく思います。

気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。